傾き屋

とくにないです。

「宇宙よりも遠い場所」5話感想

よりもい5話を観た。

圧倒的に眩しい話だった。

 

二人の関係にクローズアップしつつ、四人の歩む道にある苦難と不安をさりげなく描きつつ、最後はそれを払拭する凄まじい光。これは眩しすぎてつらい。

 

幼少の回想で描かれた、二人の関係性を決定づける場面。あの瞬間に生まれた呪縛、作中では「淀み」と言っていたけど、それを解き放つまでの流れが本当に綺麗で、わだかまりなく次の話へ向かう構成は脱帽に値する。

めぐっちゃんのつらさが痛いほど分かる。二人の始まりをずっと悔やんでいたのに、「何も持たない自分」と向き合うのを避けるため、成長できないまま今に至ってしまった苦しさ。たぶん、優越感より安心感の方が、理由として強かったんだろうと思う。だって芯は良い子だから。「あやまる」って言ったあと、格好づけないでちゃんと「ごめんなさい」 って言えるの絶対良い子でしょ。

そして、「やっと踏み出そうとしてるんだから」に続く一言が本当に美しく、厳かで侵しがたいことばだった。一拍置いて、大きな身振りで、今から口にする言葉がどれだけ残酷なもので、その行為が勇気の要ることなのかを分からせてくれてからの一撃。あのシーンのためだけにすべてがあった。

それまで、彼女が抱いていた気持ちは「妬み」なのかと考えていたけど、そうじゃなかった。置いて行かれる恐怖、焦燥感だったと気付いて、一気に心が締め付けられた。

見下すだけじゃなく、俯瞰して遠くから見ているのは、きっと楽だったはずだ。それは、自分の世界の内側しか見ていないことと同義で、しかし成長を放棄することに他ならない。

彼女は、 出発当日に、自分のエゴを満足させるために別れを告げに行ったのか。これがまだ納得いく答えを出せないでいる。たとえそうだったとしても咎めるつもりはないけれど。

結果的に、彼女は自分の世界(卵の殻)を破壊して、キマリという光を正面から浴びられるようになった。でも、実はまだ穴倉の中に佇んだままでもある。鮮やかな未来にたどり着く道筋も、行き先もまだ見えていない。それでも、心から頑張ってほしいと願う。たった十数分の話の中で、心からそう思わせてくれるような話でした。

 

 

 

~蛇足~

・卵の殻を破らねば……キマリ一家がタマゴたくさん食べてたのはそういうことだったのか(違う

 

・作中でバカ扱いされているキマリが、「淀みからの解放」を詩情豊かに紡ぐのはズルい。花田先生のこういう演出が自分はたまらなく好きなのです。けいおん最終話、学校に向かって走る平沢さんのシーンを思い出した。

 

・たぶん、キマリは本当に「なんで?」だったんだと思う。悪意を知らない。それは、単に無知という以上に、『悪意にに悪意を返す』より、もっと幸せになれる方法を無自覚に知っているから。めぐっちゃんには、あの「なんで?」の裏に何もないことをいつか気付いてほしい。

 

 ・人間関係に達観している日向が、抱えている闇を少しずつさらけ出している。陸上靴は、前話で走っているフォームが整っていた理由が分かって腑に落ちたし、そのあたりは分かりやすい。
ちょっと思ったのは、彼女がカメラ係を担当しているのは、一人だけ「女子高生」じゃないからなのか、というところ。宣伝文句として使ってる以上、異端者が映ってはいけない。それもきっと、「悪意に悪意を返すような」経験から学んだ悲しい処世術なのだろうと思うと一層悲しくなる。どうか早く、光で照らしてあげてほしい。