傾き屋

とくにないです。

読書感想文:赤いオーロラの街で

赤いオーロラの街で (ハヤカワ文庫JA)

 

去年、とある増田↓を読んでから気になっていた本をようやく読んだ。

これを書いてから、早いものでもう九年が経った。 >でもきっと、まだま..

 

飄飄としていながら、小気味良いテンポで語られる体験談が実に興味を引かれるものだったのと、「太陽フレアが発生したときの現代社会への影響」という、201X年から地続きの舞台が興味深かったので、いつか読もうと思っていたので、期待も大きかった。

 

劇的な展開もなく、災害発生から数ヶ月間を主人公の周りの世界がどう変わったかを描くドキュメンタリめいたストーリーは、インパクトこそないものの、社会に警鐘を鳴らすための小説としてすっきりまとまっていたように思う。ただ、その分小説としての盛り上がりには欠け、ご都合主義的な締まり方には不満が残った。

 

また「本当にこんなにあっさりと復興に向かえるのか?」という疑問が湧いた。作中で、ほぼ解説文のような段落が差し込まれていたのはありがたかったけど、読後に軽く調べてみると、やはり本当はもっと危機的な時期が続くような気がしてならなかった。そしてそうならば、作品内でももう少し踏み込んでほしかった……と思わざるをえない。

なにより残念なのは、題材が深刻なテーマを扱っているため、元増田による旅人のような軽さを感じる文体と合っていなかったこと。次回作は、ぜひ別の方向性の作品を読んでみたい。