吾ただ足るを知らず。

自分が考えたこと、好きだと思うものを言葉で伝えるための練習帳。

『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』感想

※この記事には「誓いのフィナーレ」「リズと青い鳥」「原作第二楽章まで」「立華編」のネタバレが含まれています。原作最終楽章の内容には触れていません。

 

観てきましたユーフォニアム

初日に休みをもらって朝イチに観るくらい楽しみにしていたんですが、それに応えてくれる作品でした。

■構成

本作は、黄前久美子2年生4〜8月の時系列を扱っています。「リズ」は同じく2年生時の4,5〜8月の話ですが、ある一点において異なる展開をしているため、おそらくパラレル時空となっています。そのため、本作は「リズ」におけるのぞみぞの成長とは無縁に進められています。

 

■初見の感想

「めちゃくちゃ端折ったな」「初見の人にはオススメしがたいな」の2点でした。

原作では久石奏と同じくらい頁を割いている有能メガネトランペッター小日向夢の名前が12月に公開された予告になかったことから、彼女のエピソードが丸ごとカットされることは充分に予測できていました。

同じように、「リズ」の繰り返しを避けるために(正確には違う展開になるんですが)のぞみぞの葛藤もスルーされるんだろうなというのも分かっていました。

でも、その上で、各エピソードに回す時間がちょっと足りなかったなあと思うところが多かったです。

具体的には、コンバス師弟の結成(すごく楽しみにしていた……)とか、加部ちゃん先輩離脱の伏線とか、そして「なつかな」とか「なつかな」とか。

そういうわけで、今回はユーフォとしては初めての完全新作だったはずなのに、今までの映画の中で一番「総集編」っぽさが強く出ていたような気がします。いろんな要素がファンサービス、ノルマのように浮いて見えてしまったところがありました

ではそうやって削った時間を何に当てたかといえば、もちろん久石奏。

 

そう久石奏。

もう原作読んだ時点で世界中が負けてしまった久石奏の銀幕デビューですよ。初登場の登校シーンは、久美子の「響け」の演奏が一気にかすんでしまうレベルの破壊力がありましたね。

本作は正しく、久石奏のための100分だったと思います。

予告の時点でフォーカスされていた「頑張るって何ですか」という問いこそが本作のテーマであり、その答えを久石が得るまでの物語だったと私は受け取りました。

努力の量か、質か。実力か、調和か。

かつて久石が否定された努力を、北宇治、あるいは黄前久美子は認めてくれるんじゃないかという期待と怯えが根底に伸びたまま、話が展開されていきました。作中では久美子の説得によって言いくるめられてしまいましたが、実際のところ答えのない問いですから、彼女は来年以降、久美子の居ない北宇治で再び同じ問題に直面することになると思います。そのとき自分自身に、あるいは後輩の誰かにどんな答えを出すのか、そこまで描いてもらえたらいいのになあと思うばかりです。

久美子の感情、「認められなくても、それでも進むんだ」という真っ直ぐな熱量が久石に届いたのは、久美子が自分と同じで、形だけの努力に価値を見出さない人間だと認めた上で、その上で見つかる何かに期待したからだと思っています。だから久石、北宇治に入って本当によかったなあと親心マックスになります。

なお、この久石と久美子の舌戦は、原作ではあすか先輩化が進む久美子の真っ黒さ全開な心理戦が繰り広げられているのですが、とってもマイルドになっていましたね。オーマエちゃんも光のユーフォ奏者としての側面が強くて、まあ映画だしなと納得しましたが、原作のえげつなさ最高なので未読の方はオススメします。

 

■なつかな/くみかな

本作で最も残念なのは、ユーフォ三人娘の関係性が「くみかな」オンリーになってしまった点です。特に夏奏に関する描写が相当カットされていて、なつかな原理主義者の私は非常に悲しいです。

このふたり(なつかな)は、「下手な先輩」に対する感情の置き所を見つけるまでにぶつかり合って、でも黄前ちゃんみたいにうまく距離感を得られないまま着陸する、おいしい関係性に落ち着くはずでした(原作)。久石のやらかしたことにしっかりとケジメを付けさせつつ、直後にフォローをいれて包み込んであげる夏紀先輩の優しさと、それに甘えて悪態をつく久石の二人になるはずだったのに、そのあたりの描写がカットされてしまったせいで、久石が心を開いたのは黄前ちゃんだけ。夏紀とはただ和解した仲良しさんという関係に留まっています。だからこそ、後の方ででてきたハッピーアイスクリームのシーンが逆に悲しく映ってしまいました。つらい。

 

そんな大いなる不満はあるものの、久石説得のくだりは最高と言わざるを得ませんでした。黒沢さんの声遣い、怖いほどハマった演技に全て持って行かれました。ちなみに、あの雨のシーンでの最萌ポイントは、悪態距離置きモードに入っているはずの久石なのに「黄前先輩」呼びに戻っておらず、内心では完全に甘えて自分の内心を曝け出したいというのが透けて見えるところです。

久石ほんとうに久石そういうところだぞ久石。サイゼで彩り野菜のミラノ風ドリアと一緒にメロンソーダ頼んじゃうあたりあざとすぎる石奏。

 

■演奏シーン

親の声より聴いたリズのコンクール編成ver.。まさか通しで全部やるとは思っていなかったので圧巻です。リズ時空を通っていないであろう傘木希美ノーマルエンド後の彼女が奏でるソリはそつなく、覚醒みぞれを支えていたように思いました。(みぞれの360度ぐるぐるシーンは笑うしかなかった。今回、みぞれはシリアスシーンに被せるようにこっそりいろいろやってて楽しそうでしたね)

その他、(ユーフォの影響でつい先日ファゴットを買ってしまった私としては)ダブルリードの会ファゴット勢が、第三楽章の入りの小節がしっかり画面に映っていたのが地味にうれしかったです。

 

演奏後、結果発表のところで部長が最後まで部長をやり遂げたところを、夏紀のフォローを含めてしっかり書いてもらえて大満足でした。原作(短編集)で「一年間、部長じゃない時間がなかった」と書かれていたとおり、本作ではまったく弱音を見せなかった吉川優子、マジ格好良かったです。(マジエンジェルノルマも達成してくれましたしね)

 

そしてエピローグ。

「そして、次の曲が始まるのです──」
この言葉が発せられることはありませんでした。(あとから知ったのですが、本作はドキュメンタリ風に作るべく、モノローグを一切使わないという意思が初めからあったということでした。でもそれはそれとして……)

黄前部長として、自ら動いていく立場になった久美子がこの言葉を発することなく幕が降りたことに勝手に意味を見いだして、私は心を打たれました。

 

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以下、箇条書きにて。

 

黄前久美子

人間関係に疎かったり鋭かったりする彼女の心根が遺憾なく発揮されていました。自分周りのことは見えていないこともあるけれど、問題の本質を突くことができる洞察力とふんわりとした人柄で、今回もまたたくさんの部員を救っていました。

しかし、奏を説得するために駆け出したときの声の凄まじいこと。予告でもその断片は聞こえていましたが、あの想いを通して聞いたときの破壊力たるやないですね。報わないかもしれない努力にも意味がある……なんて、あの頃だからこそ信じられる想いに、我々は遠くから目を細めるしかできないのです。あんなことを全力で言ってくれる先輩がいてくれて久石奏本当にお前は幸せなんだぞ、分かっているのか久石奏。

 

・夏紀先輩

フォローポジションの塊。相方のツッコミ役に徹していて、表に出ることは少なくとも存在感を示してくれた僕らの副部長。オーディションのシーンは黄前ちゃんに役を奪われてしまってなつかな成分が足りなくてつらい。でも二人で映っているだけで心が登りつめてしまうから大丈夫です。
結果発表後に部員のフォローに回ったシーンが描かれるのは今回が初めてですが、そこに当たり前のように居てくれた彼女のおかげてこの年の吹奏楽部は回っていたんだなと思ってしまってもうダメでした。
夏紀先輩は、一期から比べて最も変わった人間の一人です。オーディションの結果発表、『本気でやったからこその怖い瞬間』にたどり着くことができた奇跡を想って僕は泣きます。 

・久石奏

コロコロと表情が変わるし感情を隠しきれてないしファミレスでメロンソーダ頼んじゃったりするお前、久石聞いているのか久石。上映開始直後に久石奏が映る度にウメボシ大名みたいな顔をしながらスクリーンを見上げていたのでほんとにほんとに久石奏。どうしてこんなかわいいの権化みたいな人間がユーフォに出てきたのか本気で分からない。久石奏のことを知りたい。久石……。


そんな久石奏、雨宮天さんの演技が終始輝いていましたね。好きです。
スカートの長さも首を傾ける角度もすべて計算しつくしているくせにメンタル弱すぎてすぐに露呈してしまうポンコツ感、人をバカにするのもいい加減にしろよ久石。
外から見たらありきたりに見えるかもしれませんが、先輩後輩の関係による努力の否定って心の奥に根を張る痛みなんだと思います。だから、一度は認めた久美子先輩に失望を覚えた。
でも、ああやってジト目を向けることができる先輩が側にいることに甘えてるんですよね。それがどれだけ幸せなことか、あの時点での久石は気付いていないんですよね。その迂闊さが好きです。
黄前ちゃんによって救われてしまった彼女が、これから北宇治とどう関わっていくのか楽しみでなりません。久石奏は、あすか先輩、夏紀先輩と黄前ちゃん、その系譜をしっかりと受け継いだ『北宇治の精神を体現したキャラクター』だと思っています。
「頑張って何になるんですか?」その答えは見つからないかもしれない。でも、すべてが終わってから振り向いたとき自分に得たものがあったと、彼女なら気付けるはずです。だから今はただ先輩の背を見ながら成長していってほしい。彼女には心から「頑張れ」と言いたい気持ちにさせられました。頑張れ、久石奏。

これからの成長と、最終楽章の久石先輩に心から期待しています。期待しているからな久石。

・しゅうくみ

秀一カワイソス……原作では部長就任時に発生したヘアピン返却が合宿中に改変されていましたが、概ねお変わりなく。
どうでもいいですけど、20:03に送った謝罪メッセージに久美子が返信したのは20:17。それまでの14分間、がんばって耐えた彼を称えてあげたいと思いました。

・くみれい

距離、近くないですか?のシーン直後に駅のホームでしゅうくみの距離が遠すぎて本当に可哀想でした。義務デートのあとの逢い引き、展開的にはまったく関与してないのに特別空間展開してくれてありがとうございます。

黄前ちゃんがこれからどんな選択をしても、あの場所に戻ってくることができるのが彼女を支えてくれるんだなと、改めて思いました。「なんか吹いてよ」の破壊力やばいですよね。

 

・あすか先輩

原作読んでないと違和感しかなさそうなあのシーン(※手紙のくだり)をわざわざ入れたってことは、この時空の先の話をやるってことですよね?6月の発表を楽しみにしています。

 

・のぞみぞ

ファンサービスありがとうございました。
サンフェス衣装で踊ったりスナイパーやったりとフリーダム鎧塚さん、楽しそうでよかった。結局4人で行ったあがたまつり、あのシーンのフィルム欲しいです。

あと、帰りのバスのシーンでみぞれだけバスの中にいて、残りの3人が外で楽しそうに話をしている描写がありましたけど、来年からの4人(みぞれ以外同じ大学)を示唆していてエグいなと思いました。

 

・佐々木梓

威圧感たっぷりのボレロとか、ファミレスのシーンでさりげなく後ろを走っていたりとか、さりげない存在感を見せつける強い女。

監督が舞台挨拶にて「彼女に注目してくださいね」みたいなことを言っていたらしく、これはもしかしてもしかするのか……と立華ガチ勢が大注目の2019年になりそうです。

・オープニング

『うまく行ってもダメになっても、それが私の生きる道』
これを最初に持ってくるの、メッセージ性強すぎて唸るしかない。すっごい応援歌。『最後まで見ていてね』そう歌っているこの曲が、明るい未来を示してくれる。

・エンディング

Blast!、良い曲ですよね。いままでのTRUEさんの曲で一番好きというか刺さりました。今年の定期演奏会で聴きたいなあ……。

 

■総評

尺が足りなくて勿体なかったり、なつかな不足が深刻でしたけど、概ね満足の本作でした。まったく関係ないですが、夏コミでなつかな本を出すのでもし覚えていたらよろしくお願いします(蛇足)。